知っておきたい「法定帳簿」の基本とよくある不備【社会保険労務士が解説】

労働者を雇用する事業主・人事労務担当者の皆さま、こんにちは。社会保険労務士の赤城正孝です。

今回は、法律で作成・保存が義務付けられている法定帳簿について解説します。

しっかりと内容を理解し、事業所の労務管理体制を整えましょう。

法定帳簿とは?

労働基準法により、労働者を雇用する事業者には、以下の4つの帳簿を整備し、保存することが義務付けられています。

労働基準監督署の調査時にチェックされますので、日頃からこれらの帳簿を正しく作成し運用するようにしてください。

労働基準法で定められた代表的な4つの帳簿

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿は、法定三帳簿と呼ばれ、2019年4月から年次有給休暇管理簿も作成が求められるようになりました。

帳簿の名称記載項目保存期間・起算日
労働者名簿① 労働者氏名
②生年月日
③履歴
④性別
⑤住所
⑦従事する業務の種類
⑧雇入年月日
➈退職や死亡年月日、その理由や原因
3 年

労働者の死亡・退職・解雇の日
賃金台帳① 労働者氏名
②性別
③賃金の計算期間
④労働日数
⑤労働時間数
⑥時間外労働時間数
⑦深夜労働時間
⑧休日労働時間数
⑨基本給や手当等の種類と額
⑩控除項目と額
3 年

労働者の最後の 賃金について記入した日
出勤簿① 出勤簿やタイムレコーダー等の記録
②使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類
③残業命令書及びその報告書
④労働者が記録した労働時間報告書等
3 年

労働者の最後の出勤日
年次有給休暇管理簿①取得日
②付与日
③日数
3年間

最後の年休取得日

労働基準監督署の指導でよく見られる不備

労働基準監督署の調査で、法定帳簿に関して以下のような不備が見つかることがあります。

  • 作成義務違反: 労働者名簿等を作成していない。
  • 保存義務違反: 労働者名簿等を保存期間に廃棄してしまった。
  • 記載漏れ: 賃金台帳の賃金計算期間や労働時間数、残業時間数、労働者名簿の退職年月日、履歴などが記載されていない。
  • 出退勤時間の不備: 押印のみで、始業・終業時間が記録されていない出勤簿。
  • 年次有給休暇管理簿の未作成: 作成義務を知らずに作成していない、あるいは付与日や取得日の記載がない。

法定帳簿の不備は、労働基準法違反となり罰則が適用される場合があります(年次有給休暇管理簿を除く)。皆さまの事業所でも、一度これらの項目について社内点検を進めてみましょう。

その他の書類

ご説明した帳簿以外にも、保存が求められる書類があります。その代表的なものをご説明します。

名称説明保存期間・起算日
労働条件通知書労働者を雇用する前に、賃金や労働時間などの具体的な労働条件を明示し、交付する書類3 年

交付日
労使協定書労働者の過半数を代表する者との間で、法令の原則から外れた労働条件を定める際に締結される合意書3 年

労使協定の完結日
定期健康診断の結果労働安全衛生法に基づき、事業主が従業員に1年に1回以上実施する義務がある健診の結果です。5年

健康診断結果の作成日

おわりに

法定帳簿は、従業員との間でトラブルを未然に防ぎ、健全な会社経営を行うための重要な書類です。

作成・運用方法に不安がある場合は、ぜひお近くの社会保険労務士にご相談ください。

また、書類の作成・保存作業の時間を削減されたい場合には、勤怠管理等のシステム導入をご検討ください。

お問い合わせ

少しでもご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・キャッシュフローコーチ・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

目次