ものづくり補助金第23次、採択率を上げる審査ポイントと加点の取り方

目次

はじめに

ものづくり補助金の第23次公募は5月8日が締切です。製造業・サービス業を問わず設備投資や新製品開発に最大3,500万円の補助を受けられる制度ですが、採択率は30%台で推移しており、申請した企業の3社に2社は落選しています。

書類を出せば通るという時代ではありません。採択を左右するのは、審査員が何を見て点数をつけているか、そして加点をいくつ取れるかです。

この記事では、第23次の審査の仕組みと評価項目の全体像、加点項目を取得するための実務的な手順、落選に至るパターンを解説します。

第23次公募の概要と補助上限

第23次公募の受付期間は2026年4月3日〜5月8日17:00です。17:00を1秒でも過ぎると受け付けられません。

申請枠と補助上限

第23次では2つの申請枠が設けられています。

製品・サービス高付加価値化枠

革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善を支援する枠です。通常類型と成長分野進出類型(DX・GX)の2つの類型があります。

従業員数通常類型成長分野進出類型(DX・GX)
5人以下750万円1,000万円
6〜20人1,000万円1,500万円
21〜50人1,500万円2,500万円
51人以上2,500万円3,500万円

補助率は中小企業が1/2、小規模事業者が2/3です。最低賃金引上げの特例要件を満たす場合、補助率を2/3に引き上げられます。

グローバル枠

海外需要の開拓や国際競争力の強化を目的とした取り組みを支援する枠です。補助上限は3,000万円、補助率は中小企業1/2・小規模事業者2/3です。

賃上げ要件

第23次から賃上げ要件が引き上げられ、従業員1人あたり給与支給総額を年率平均3.5%以上増加させることが必須となりました。第22次の2.0%から引き上げられた数字です。賃上げ計画が現実的に実行できるかどうかも、採択審査で確認されます。

小規模事業者の定義は従業員20人以下です。商業・サービス業は5人以下が基準となります。自社がどちらの区分に該当するかは、申請前に確認しておいてください。

対象となる費用の主な例

  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費・専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費・知的財産権等関連経費

実際に補助対象経費を支出したかどうかを事業終了後の実績報告で証明する必要があります。領収書や契約書の管理を前提に計画を立ててください。

審査はどう行われるのか — 評価の3軸

ものづくり補助金の審査は、外部有識者による書面審査で行われます。提出した事業計画書を複数の審査員が読み、技術面・事業化面・政策面の3軸で得点化します。得点の高い申請から順に採択されます。

技術面:革新性と実現可能性

自社が取り組む課題の革新性・独自性が問われます。既存技術の延長ではなく、業界水準と比較して明確に差別化される技術的アプローチが必要です。審査で確認されるのは以下の点です。

  • 解決しようとする技術的課題が何であるか、なぜ難しいのか
  • 現状の解決手段との違いはどこにあるか
  • 自社が実現できる根拠として、技術者の経歴・保有設備・過去の開発実績などが示されているか

ここで点が取れない計画書の共通点は、取り組み内容の記述が抽象的なことです。「生産性を向上させる」「品質を改善する」では評価されません。「現状の歩留まり率XX%を、〇〇技術の導入によりYY%へ改善する」という具体性が求められます。

単に設備を導入するだけで課題が解決するのであれば、他社も同じ設備を購入すれば解決できてしまいます。自社が導入するからこそ他社との差別化に繋がり収益性が高まる、ということを審査員に説明する必要があります。

また、審査員に説明するという観点で言うと、業界の専門用語などを使う場合には補足を入れましょう。あなたの業界では当たり前の言葉でも、審査員がその業界に精通しているとは限りません。

事業化面:市場と収益の実現性

補助事業の成果が事業として成立するかを評価します。市場調査のない計画、顧客候補が具体的でない計画は得点が低くなります。

  • 対象市場の規模と成長性、競合状況の分析
  • 想定顧客のリストアップと商談・引き合いの状況
  • 売上・利益の数値計画(補助事業終了後3〜5年分)

財務状況と投資規模のバランスも確認されます。年商2,000万円の企業が2,000万円の設備投資を申請するケースは、実行可能性の観点から厳しく評価されます。自己負担分の資金調達の見通しを計画書に明記することが必要です。

政策面:政策目的との整合

補助金の政策目的である中小企業の生産性向上・賃上げ・新市場開拓等との整合性を確認します。賃上げ要件を上回る水準の賃上げ計画を示せるか、地域経済や雇用への波及効果が見込めるかが問われます。

複数期の赤字が続いている企業は、財務改善の見通しを含めて記述しないと政策面の評価が下がります。

加点項目を戦略的に取る

採択審査は基本点+加点の合計得点で競います。加点項目を取得できているかどうかで、同じ事業計画書でも採択率が変わります。準備期間が短い順に整理します。

パートナーシップ構築宣言(準備期間:1週間)

サプライチェーン全体の付加価値向上を目指し、取引先への価格転嫁・支払い条件改善等に取り組む宣言をするものです。専用ポータルサイトへのオンライン登録のみで完了し、費用は一切かかりません。締切前日までに公表されていれば加点対象となります。取得コストが最も低く、効果が確実なため、最優先で検討すべき加点項目です。

事業継続力強化計画(準備期間:1〜2ヶ月)

自然災害・感染症等のリスクに備えた防災・減災計画を策定し、経済産業大臣の認定を受けるものです。地域の経済産業局へ申請書を提出し、認定まで原則1ヶ月程度かかります。

商工会・商工会議所が雛形の提供と相談支援を行っており、初めての場合も対応しやすい入口です。認定後も計画の実施状況を毎年自己評価して公表する義務がありますが、補助金申請の加点という観点では、取得そのものが対象となります。

経営革新計画(準備期間:2〜3ヶ月)

都道府県知事の承認を受けた中期経営計画です。新商品開発・新サービス提供・新市場開拓など経営革新に取り組む計画を策定し、都道府県の窓口へ申請します。承認まで通常2〜3ヶ月かかるため、5月8日の締切に間に合わせるには今すぐ申請を開始する必要があります。

承認後は都道府県から各種支援施策を受けられるため、補助金加点以外のメリットもあります。自社の経営方針と整合した内容であれば、事業計画書の精度を上げる作業と並行して進められます。

健康経営優良法人(既取得企業のみ今回加点対象)

経済産業省が認定する従業員の健康管理に優れた法人の認定制度です。毎年3月頃に新年度の認定結果が公表されるサイクルのため、現時点で認定を持っている場合は加点対象になります。

今年度の認定を持っていない場合、次のサイクルまで取得できないため、今回の申請には間に合いません。既に取得済みの企業は必ず加点書類として添付してください。

DX認定(準備期間:3〜6ヶ月 → 次回公募に向けて取得を検討)

経済産業省のデジタルガバナンス・コードに対する取り組みを自己申告し、認定を受けるものです。自社のDX推進方針の策定・公表が必要で、申請から認定まで3〜6ヶ月かかります。5月8日の締切には間に合わない可能性が高いため、今回よりも次回公募に向けて取得を検討するのが現実的です。

加点取得の優先度まとめ

加点項目準備期間今回の締切に間に合うか費用
パートナーシップ構築宣言1週間無料
事業継続力強化計画1〜2ヶ月今すぐなら○無料〜低コスト
経営革新計画2〜3ヶ月今すぐなら△無料〜低コスト
健康経営優良法人既取得のみ既取得企業のみ○
DX認定3〜6ヶ月✗(次回向け)無料

取得できる加点を全て取っている企業と、1つも取っていない企業が同等の事業計画書を提出した場合、前者が採択される可能性が高くなります。認定支援機関に加点の見込みを確認してもらうことを推奨します。

採択率3〜4割の実態と、落選しやすいパターン

過去の採択率は第21次で34.1%、第18次では35.8%でした。採択率は第14〜15次の50%台から下がり続けており、30%台での推移が続いています。

落選に至るパターンには共通点があります。

パターン1:事業計画の実現性が曖昧

新しい設備を導入して生産性を上げる、という程度の抽象的な記述では採択されません。審査では、技術的な課題が何で、それをどう解決するか、体制・資金の目処が立っているかを具体的に問われます。

競合他社との差別化が見えない計画、市場規模や顧客ニーズの分析がない計画は、実現性が低いとみなされます。

パターン2:財務状況と投資額のバランスが崩れている

年商2,000万円の企業が2,000万円の設備投資を申請するケースは、実行可能性の観点から厳しく評価されます。複数期の赤字が続いている場合も、採択されにくい傾向があります。

補助金はあくまでも費用の一部を補助するものです。自己負担分の資金調達の見通しも計画書に明記しておく必要があります。

パターン3:加点項目を全く取っていない

上述の通り、加点項目は採択の可否を左右します。特にパートナーシップ構築宣言は1週間で取得できるにもかかわらず、存在を知らずに申請する企業が一定数います。認定支援機関に相談すれば取得可能な加点を整理してもらえます。

今から動くための準備チェックリスト

申請まで残り約3週間で必要な準備を整理します。

今週中(優先度高)

□ GビズIDプライムを取得する(マイナンバーカードがあればオンライン申請で最短即日発行)
□ 認定支援機関に連絡する。税理士・商工会・中小企業診断士などが該当する
□ パートナーシップ構築宣言を検討・登録する。加点対象で1週間程度で完了できる
□ 事業継続力強化計画の申請書類を確認し、可能であれば今週中に経済産業局へ提出する

来週以降(事業計画書の作成)

□ 補助対象の事業内容を明確にする。何を、なぜ、どう実施するかを言語化する
□ 市場・競合の分析を行う
□ 資金計画と賃上げ計画を数字で示す
□ 取得できる加点項目を認定支援機関に確認する
□ 電子申請システム(jGrants)で申請書を入力する

認定支援機関のサポートなしでも申請は可能ですが、事業計画書の完成度は採択率に直結します。初めて申請する場合は、商工会・商工会議所、税理士、中小企業診断士など認定支援機関への早期相談をお勧めします。

よくある疑問

Q. 個人事業主でも申請できますか?

申請できます。製造業・サービス業・IT業など業種の制限は特になく、革新的な製品・サービス・生産プロセスの改善を目指す事業計画であれば、個人事業主でも申請可能です。

Q. 過去に不採択だった場合、再申請できますか?

再申請は可能です。ただし不採択通知には理由の記載がないため、どこに問題があったかは自分で振り返るしかありません。不採択になった申請をそのまま再提出しても改善は見込めないため、認定支援機関のフィードバックを受けながら計画を練り直すことをおすすめします。

Q. 採択後、いつ補助金が受け取れますか?

採択はあくまでも補助金の交付決定ではありません。採択後に交付申請を提出し、審査を経て交付決定が下りてから事業を開始します。補助金の受け取りは事業完了後の実績報告・精算払い請求を経た後です。採択から受給まで1〜2年程度かかることを前提に資金計画を立ててください。

Q. 認定支援機関とは何ですか?費用はかかりますか?

認定支援機関とは、国が認定した経営支援の専門家のことで、税理士・公認会計士・中小企業診断士・商工会商工会議所などが該当します。商工会・商工会議所は無料または低コストで相談を受け付けており、初めての申請でもハードルが低い入口といえます。民間の補助金専門コンサルタントは成功報酬型が多く、採択時に補助額の10〜20%程度が費用として発生する点は、依頼前に確認が必要になります。

まとめ

ものづくり補助金第23次は5月8日が締切です。採択率は30%台で推移しており、審査の3軸(技術面・事業化面・政策面)で高い評価を得ることと、取得できる加点項目を積み上げることが採択への現実的な道筋です。

今週中に動ける優先度の高い行動は2つです。パートナーシップ構築宣言を登録すること、そして認定支援機関に連絡して加点の取得可能性を確認すること。事業計画書の完成度と加点の積み上げを並行して進めることが、採択の可能性を残す最低条件です。

弊所への相談・次のステップ

弊所では、補助金の申請はもちろん、申請に必要な賃上げ計画の労務面サポートを承っています。ものづくり補助金の審査では賃上げ要件の実現性も確認されますが、給与体系の整備や規程の見直しが必要な場合は社労士との連携が欠かせません。

補助金申請の準備段階から、労務面での問題点の洗い出し・対策立案をサポートします。まずはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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