社会保険の同月得喪・同日得喪とは。入社月退職と再雇用で社長が確認したい保険料

社会保険の同月得喪・同日得喪と入社月退職、再雇用時の保険料を示すアイキャッチ

基準日:2026年8月8日

社会保険の同月得喪は、入社した月に退職したときの扱いです。たとえば、8月1日に入社して社会保険に入り、8月20日に退職するケース。資格取得と資格喪失が同じ月に入ります。

ここで日割りの感覚を持ち込むと、給与計算を間違えます。社会保険料は月単位。1日だけの加入でも、保険料が発生する場面があります。

見落としやすいのは健康保険料です。入社月に退職し、その後に国民健康保険へ入ると、同じ月に会社の健康保険料と国民健康保険料が発生します。従業員から二重ではないかと聞かれたとき、会社側で説明できる準備が必要です。

目次

同月得喪は入社月退職で起きます

入社、同月退職、国保加入、保険料確認の流れを示す図
入社月に退職した場合は、同月得喪として保険料を確認します。

同月得喪は、社会保険の資格を取得した月に、その資格を喪失することです。採用後すぐに退職した従業員がいるときに出てきます。

社長が誤りやすいのは、勤務日数が短いから社会保険料はいらない、という判断です。日割りでもありません。厚生年金保険料は、資格取得した月に資格喪失した場合でも納付が必要です。

退職日は最後に勤務した日。社会保険の資格喪失日は、原則として退職日の翌日です。給与を確定する前に、この2つを分けて確認してください。

厚生年金保険料は戻る場合があります

厚生年金保険料は、同月得喪だから必ず最終負担になる、という話ではありません。同じ月に別の厚生年金保険や国民年金の資格を取得した場合、先に喪失した厚生年金保険料は納付不要となり、還付の扱いになります。

日本年金機構の案内でも、資格取得月に資格喪失し、その月に厚生年金保険または国民年金の資格を取得した場合、先に喪失した厚生年金保険料は納付不要とされています。年金事務所から会社へ還付のお知らせが届き、会社が従業員負担分を本人へ返す流れです。

ここは給与計算だけで終わりません。年金事務所からの通知、会社負担分の還付、本人負担分の返金。3つを分けて見る場面です。

注意点は、健康保険料まで同じ扱いにしないことです。厚生年金保険料の還付があるから、健康保険料も当然に戻るとは限りません。

健康保険料は二重で発生する場合があります

健康保険料と国民健康保険料が同じ月に発生する場合を示す図
同月得喪では、健康保険料と国民健康保険料が同じ月に発生する場合があります。

同月得喪のデメリットは、健康保険料と国民健康保険料が同じ月に発生する場合があることです。従業員から質問されやすい部分。給与控除の説明でつまずきやすい部分でもあります。

会社の健康保険に加入し、同じ月に退職して国民健康保険へ入ると、例外的に二重払いが生じます。職場の健康保険は、月末時点で加入していなくても、同じ月に1日でも加入期間があれば保険料が発生します。国民健康保険も、加入すべき理由が発生した月から保険料がかかります。

8月1日に入社し、8月20日に退職。8月21日から国民健康保険に入るケースなら、8月分について会社の健康保険料と国民健康保険料が発生します。

この説明がないまま給与から健康保険料を控除すると、従業員は誤徴収だと受け取りやすくなります。会社側で伝えるべきことは、同月得喪であること、厚生年金と健康保険で扱いが違うこと、国民健康保険の手続き先は市区町村であること。この3点です。

同日得喪は60歳以上の再雇用で使われやすい手続きです

同日得喪、60歳以上の再雇用、届出書類の確認を示す図
同日得喪は、60歳以上の継続再雇用で使われやすい手続きです。

同日得喪は、資格喪失と資格取得を同じ日に行う手続きとして使われます。代表例は、60歳以上の従業員を退職後、1日の空白もなく継続して再雇用する場合です。

日本年金機構は、60歳以上の方を退職後に継続再雇用する際、使用関係が一旦中断したものとみなし、被保険者資格喪失届と被保険者資格取得届を提出できる扱いを案内しています。

この手続きの狙いは、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額へ見直しやすくすることです。定年後再雇用で給与が下がるのに、標準報酬月額だけ高いまま残ると、社会保険料の負担感が強くなります。

必要になるのは、退職日と再雇用日が分かる書類です。就業規則、退職辞令、雇用契約書、継続再雇用に関する事業主の証明書など。書類確認が先です。

給与計算前に見る資料

同月得喪や同日得喪が出たときは、給与計算の前に資料を並べます。後から直すと、本人への返金、会社負担分の処理、市区町村への説明が増えます。

確認する資料見るポイント
雇用契約書入社日、社会保険加入日、再雇用日
退職届・退職合意書退職日、最終勤務日
賃金台帳最終給与で控除する保険料
社会保険の取得届・喪失届資格取得日、資格喪失日
年金事務所からの通知厚生年金保険料の還付有無
国民健康保険の案内国保加入月と保険料説明

給与から控除する前に、本人へ短く説明しておく方が後のやり取りを減らせます。特に健康保険料。厚生年金と違い、同じ月に国民健康保険料と重なることがあります。

従業員へはこの順番で伝えます

従業員へは、制度名から入るより、給与から何が引かれるかを先に伝えます。その方が話が早いです。

最初に、社会保険料は月単位で計算されること。次に、入社月に退職したため同月得喪に該当すること。最後に、厚生年金保険料は後日還付される場合があり、健康保険料は国民健康保険料と同じ月に発生する場合があること。

説明文は、次の形で足ります。

入社月と退職月が同じため、社会保険は同月得喪の扱いになります。厚生年金保険料は、同じ月に国民年金などの資格を取得した場合、後日還付の対象になることがあります。健康保険料は扱いが異なり、国民健康保険料と同じ月に発生する場合があります。

給与控除、年金事務所からの還付、国民健康保険の手続き。説明を分けるだけで、本人の受け止め方が変わります。

手続き前に確認すれば修正を減らせます

同月得喪と同日得喪は、名前が似ています。入社月退職なのか、60歳以上の継続再雇用なのかで、確認する書類も説明する相手も変わります。

小規模企業では、1人の退職でも給与計算、社会保険手続き、本人への説明が同時に動きます。健康保険料が二重で発生する場面は、事前説明がないと不満につながります。

入社月に退職した従業員がいる場合や、60歳以上の再雇用で給与が変わる場合は、給与を確定する前に退職日、資格喪失日、再雇用日、国民健康保険への切替有無を確認してください。

社会保険の取得・喪失、給与計算、退職時の説明で迷う場合は、早めに確認しておく方が安全です。弊所では、入退社時の社会保険手続きと給与計算の確認をお手伝いしています。

FAQ

同月得喪とは何ですか

同月得喪は、社会保険の資格を取得した月に、その資格を喪失することです。入社した月に退職した従業員がいる場合に問題になります。

1日だけ社会保険に入った場合も保険料はかかりますか

同月得喪に該当する場合、1日だけ加入していても保険料が発生する場面があります。勤務日数の日割りではなく、月単位で確認します。

厚生年金保険料は必ず本人負担になりますか

必ず最終負担になるわけではありません。同じ月に厚生年金保険または国民年金の資格を取得した場合、先に喪失した厚生年金保険料は還付の対象になることがあります。

健康保険料も厚生年金保険料と同じように戻りますか

同じ扱いにはしません。健康保険料は、同月得喪で国民健康保険へ入る場合、国民健康保険料と同じ月に二重で発生することがあります。

同日得喪はどのような場面で使いますか

同日得喪は、60歳以上の従業員を退職後、1日の空白もなく継続再雇用する場合に使われやすい手続きです。資格喪失届と資格取得届を同時に出す形で進めます。

同日得喪にはどの書類が必要ですか

退職日と再雇用日が分かる書類が必要です。就業規則、退職辞令、雇用契約書、継続再雇用に関する事業主の証明書などを確認します。

給与計算前に何を確認すればよいですか

退職日、資格喪失日、再雇用日、最終給与の控除、国民健康保険への切替有無を確認します。健康保険料と国民健康保険料が同じ月に発生するかも、先に確認してください。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

目次