中東情勢による原材料価格高騰に伴う経営基盤安定化緊急対策事業は使えるか。申請前に確認したい5つの点

中東情勢による原材料価格高騰への対応を考える事業者と申請チェックを描いたアイキャッチ

基準日: 2026年7月10日

一次情報: 東京都中小企業振興公社 案内ページ、令和8年度第1回募集要項PDF

原材料価格の高騰で利益率が落ちている会社にとって、この事業は設備やシステムの導入をまとめて検討しやすい制度です。助成率は高めですが、金額だけ見て進めると途中で詰まりやすいです。自社が対象に入るか、やりたい取組が対象外に当たらないか、交付決定まで待てるか。この順で見た方が早いです。

中東情勢による原材料価格高騰に伴う経営基盤安定化緊急対策事業は、中東情勢を契機としたコスト高騰の影響を受け、利益率の低下が見込まれる都内中小企業等に向けた制度です。原材料費の縮減、歩留まり改善、価格転嫁に向けた設備、システム、外注などが対象になりえます。

この記事では、事業者向けにこの制度の見方を整理し、申請前に確認したい点を5つに絞ってまとめます。補助対象になりそうかを先に見たい方、社内で投資判断の順番を決めたい方は、ここから確認してください。

目次

申請前に確認したい5つの点

対象要件、対象外、対象経費、電子申請、発注時期の5項目を示した確認図
申請前に確認したい5つの点

この制度は、申請書の書き方より前に整理したい条件があります。先に見たいのは次の5点です。

  • 都内で事業を行う中小企業等として対象に入るか
  • 営業利益率の減少、次期の減少見込み、営業損失のいずれかに当てはまるか
  • やりたい取組が対象外ではなく、原材料高騰の影響回避につながる内容か
  • 経費区分の組み方に無理がないか
  • Jグランツ、GビズID、交付決定後の実施期間まで含めて準備できるか

この5点が整理できていれば、出せる制度か、まだ設計を見直す段階かをかなり早く分けられます。逆に、単なる老朽更新しか考えていない、利益率の確認資料が出ない、交付決定前に発注したい、という状態なら、申請書づくりより前に計画の組み直しが必要です。

自社が対象に入るかを最初に見る

最初に確認したいのは、設備投資の内容より、申請できる立場に入るかです。

公社の案内では、申請要件を満たす東京都内で事業を行う中小企業者が対象です。加えて、申請受付開始日時点で、直近決算期の営業利益率が前期より下がっている、次期決算期の営業利益率が直近決算期より下がる見込みがある、直近決算期で営業損失を計上している、のいずれかに当てはまる必要があります。

ここで見落としやすいのは、値上がりの影響を受けている感覚だけでは足りない点です。決算書や試算表で利益率の下がり方を説明できるか、来期見込みの根拠を社内で示せるかが先です。申請準備を始める前に、前期と直近の営業利益率、今期の着地見込みを1枚にまとめておくと話が早くなります。

取組内容が対象外に当たらないかを確認する

対象に入っていても、やりたい投資がこの制度の趣旨に合わなければ進みません。

案内ページにある取組例は、塗料の使用量を減らす機器、不良品を早期に見つけて歩留まりを上げる検査装置、紙容器への切り替えに向けた機器改良、在庫ロスを減らす発注管理システムの構築です。原材料の使用量を減らす、ロスを減らす、価格転嫁に向けて運用を変える、という流れが見える取組は通しやすいです。

反対に、募集要項で対象外として挙がっているのは、既存事業との関連が薄い取組、法令対応のような義務的な取組、単なる老朽設備の維持更新、単なる原材料の置き換えだけにとどまる取組です。設備を入れ替える話でも、生産性や原材料費の縮減につながる説明が弱いと厳しくなります。

導入機器が決まっていない段階なら、先に無料の支援で整理する手もあります。東京都の支援を入口から見直したいなら、どこをシステム化し、どこを現場改善で済ませるかを先に分けておくと進めやすいです。

経費区分の組み方に無理がないかを見る

この制度では、何にお金を使うかを大づかみで並べるだけでは足りません。経費区分の組み方まで見ておく必要があります。

案内ページで示されている主な経費は、原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、機器・システム改良費、委託・外注費、設備等導入費、システム等導入費、専門家指導費、販路開拓経費、その他経費です。助成限度額は2,000万円、助成率は5分の4以内です。

見落としやすい点もあります。募集要項では、専門家指導費とその他経費は単独申請できません。販路開拓経費には500万円の上限があり、その他経費には100万円の上限があります。つまり、相談料や細かな周辺費用だけで組む制度ではなく、主軸になる設備、改良、システム、外注の計画が先に必要です。

たとえば、検査装置の導入、発注管理システムの構築、現場改善の専門家指導を一緒に考えている場合でも、どれが主経費で、どれが補助的な経費なのかを分けて見た方が通しやすいです。賃上げを伴う設備投資も同時に検討しているなら、制度ごとに対象経費と順番が違うため、同じ設備でもどちらで出すかは先に整理した方が無駄が出にくいです。

電子申請の準備とスケジュールを先に押さえる

申請から交付決定、対象期間までの流れを示したタイムライン図
申請から交付決定までの流れ

申請の準備は、締切直前に始めるより前倒しで動いた方が安全です。

第1回募集の申請期間は2026年7月17日から7月31日までで、申請はJグランツによる電子申請です。GビズIDプライムの取得が必要で、公社の案内では発行に2〜3週間かかるとされています。IDをまだ持っていない会社は、この時点で申請可否が分かれます。

書類審査は2026年8月から、面接審査は9月24日から10月9日まで、交付決定は10月下旬予定です。面接審査もあるため、書面だけ整えば終わる制度ではありません。利益率の下落理由、導入後にどのように原材料費やロスを減らすか、価格転嫁にどうつなげるかを口頭でも説明できる状態にしておく必要があります。

代理申請は、Jグランツ上の当初申請手続きに限って第三者による機能利用が認められています。同意書の提出が必要なので、申請後の確認や追加対応まで全部を外へ任せる前提で考えず、社内で誰が資料を出し、誰が内容確認をするかは先に決めておいた方が混乱しません。

交付決定前に発注しないかまで含めて判断する

交付決定前の契約と発注は不可、交付決定後の契約と発注が対象になることを示した比較図

交付決定前の契約・発注は対象外

この制度は、通ればすぐに使えるお金ではありません。実施の順番まで見ておく必要があります。

募集要項では、助成対象期間は交付決定日から1年間です。この期間内に契約、実施、支払いまで完了する経費が対象になります。交付決定前に発注した場合や、納品が助成対象期間を超えた場合は対象外です。

ここは設備投資の現場で特に詰まりやすいです。値上がり前に急いで発注したい、既にベンダーと話が進んでいる、導入時期を年内固定で見ている。このような案件は、制度上は相性が良さそうでも、順番が合わずに外れることがあります。投資判断を急ぐときほど、発注日、納品日、検収日、支払日を1本の表にしてから判断した方が安全です。

相談前に整理しておきたい6点

この制度を使えるか相談したいときは、次の6点があるとかなり早く話が進みます。

  • 前期と直近決算期の営業利益率
  • 今期の利益見込みと、その前提になっている原材料高騰の影響
  • 導入したい設備、システム、改良内容
  • その取組で何が減るのか。原材料費、在庫ロス、不良率、作業時間のどれか
  • 発注予定日と導入完了予定日
  • GビズIDプライムの有無

この6点があるだけで、対象に入るか、取組の説明が足りないか、時期が合うかをかなり早く見分けられます。見積書を全部集めてから相談するより、計画の骨格だけを先に整理した方が判断しやすいです。

原材料高騰対策の投資判断を整理したい方へ

この制度は、助成率の高さだけで判断するより、対象要件、対象外、経費区分、交付決定までの順番を並べて見る方が失敗しにくいです。特に、利益率の説明と発注時期の整合が取れていない案件は、途中でやり直しになりやすいです。

弊所では、設備導入、システム導入、労務、資金計画を分けて整理しながら、今回出すべきか、別の制度や別タイミングで考えるべきかを一緒に確認できます。中東情勢による原材料価格高騰に伴う経営基盤安定化緊急対策事業を使えるか迷う場合はご相談ください。

FAQ

赤字でも申請できますか

できます。募集要項では、直近決算期に営業損失を計上している場合も要件の一つに入っています。

値上がりの影響を受けていれば申請できますか

それだけでは足りません。都内で事業を行う中小企業等であることに加え、営業利益率の低下や次期の低下見込みなどの要件も確認する必要があります。

古い設備の買い替えだけでも対象になりますか

そのままでは厳しいです。単なる老朽設備の維持更新は対象外の例として示されています。

申請は紙でも出せますか

出せません。案内ページではJグランツによる電子申請受付とされています。

交付決定前に契約した経費も対象ですか

対象外です。募集要項では、交付決定前の発注や契約、助成対象期間を超える納品は外れる例として示されています。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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