カスタマーハラスメント防止対策推進事業で40万円。申請前に確認したい準備と実践取組

カスタマーハラスメント防止対策推進事業の40万円奨励金と申請前準備を確認する経営者と専門家のイラスト

東京都のカスタマーハラスメント防止対策推進事業では、要件を満たす都内中小企業等に40万円の奨励金が支給されます。令和8年度第2回の事前エントリーは、2026年10月23日10時から11月6日17時までです。受付件数は5,000件で、先着順ではありません。

この制度は、マニュアルを作っただけでは申請できません。カスハラ対策マニュアルの整備・周知に加え、録音・録画環境、AIを活用したシステム、外部人材の活用のいずれかを実施している必要があります。この記事では、申請前に何を確認し、どの取組を選ぶかを小規模企業向けに整理します。

※本記事は2026年9月15日時点の東京都・東京しごと財団の公開情報をもとに作成しています。第2回の募集要項や手順書が公開された後は、必ず最新情報をご確認ください。

目次

40万円の奨励金で最初に確認する条件

この奨励金は、都内で継続的に事業を行う中小企業等が対象です。ただし、従業員数だけで判断できません。所在地、事業実態、納税、労働関係法令の遵守状況まで確認が必要です。

主な対象要件は次のとおりです。

  • 常時雇用する従業員が300人以下である
  • 都内で事業を営む中小企業等または個人事業主である
  • 法人は都内に本店または支店の事業所がある
  • 個人事業主は税務署へ開業届を提出している
  • 都内の事業所で継続的に1年以上事業を行っている
  • 税金の滞納がない
  • 過去5年間に重大な法令違反がない
  • 労働関係法令を遵守している

法人の場合、登記上の所在地だけでなく、都内の事業所で実質的に事業を行っているかも確認されます。個人事業主の場合も、開業届があるだけでなく、都内での事業実態が必要です。

マニュアルは作成するだけでは足りない

申請には、カスハラ対策マニュアルの作成または改定、社内周知、基本方針の社内・社外への周知が必要です。章立てだけの資料は認められず、募集要項に記載された必須項目を本文に含めなければなりません。

申請前に確認する資料は次の4つです。

  • マニュアル本体
  • マニュアルの作成日または改定日が分かる記録
  • 従業員へ周知した日が分かる記録
  • 店頭、自社サイト、顧客先への案内など、社外周知の記録

従業員へメールで送った場合は、送信日と対象者が分かる形で保存します。朝礼で説明した場合は、開催日、参加者、説明内容を記録しておくと確認しやすくなります。

社外周知も見落としやすい部分です。マニュアルを社内だけで保管していても、社外への周知にはなりません。店頭掲示やWebサイトへの掲載など、自社の顧客接点に合わせた方法を選びます。

実践的な取組は3つから選ぶ

カスハラ防止の実践取組である録音録画、AIシステム、外部人材の比較イラスト
実践的な取組は、録音・録画、AIシステム、外部人材から選びます。

マニュアル整備に加えて、次のいずれか1つを実施します。高額な設備を導入することが目的ではありません。自社のカスハラ対応で実際に不足している部分から選ぶことが重要です。

録音・録画環境を整備する

都内事業所に、カスハラ対策を目的とする録音・録画機器を新たに購入またはリースします。契約の場合は6か月以上の契約期間が必要です。

確認すべき点は、機器の機能、購入または契約の時期、領収書、運用ルールです。請求書だけでは証票として認められないため、支払い後の領収書を保管します。録音・録画をどの場面で使うか、誰が確認できるか、盗聴や盗撮と誤解されないための案内をどうするかも決めておきます。

接客時の録音を導入するなら、従業員が個人の判断で録音を始める運用にしないことが必要です。録音の目的、保存場所、閲覧権限、保存期間まで社内ルールに落とし込みます。

AIを活用したシステムを導入する

カスハラ対策に利用できるAIシステム等を新たに導入する方法です。単にAI機能が付いたサービスを契約すればよいわけではありません。AIが使われていることと、カスハラ対策に利用できることを、製品資料やWebサイト等で確認できる必要があります。

導入前に、次の資料を保存してください。

  • AI機能が確認できる製品資料
  • カスハラ対策への利用方法が分かる説明
  • 契約日または購入日が分かる資料
  • 支払いを確認できる領収書
  • 社内への周知日と運用ルール

AIシステムを導入しても、対応方針が決まっていなければ現場では使えません。録音データや会話記録を誰が確認し、どの段階で管理者へ報告するかまで決めてから契約します。

外部人材を活用する

社内の課題改善を目的に、カスハラ対策の専門家や警備会社と新たに契約する方法です。継続的な相談対応、社内研修などのスポット契約、警備会社との法人契約が対象になります。

継続契約の場合は、カスハラ対策を含む契約内容と6か月以上の契約期間を確認します。スポット契約では、自社が主催する研修を事前エントリー時点で実施している必要があります。他社主催のセミナーへ参加しただけでは対象外です。

対象となる専門家として、弁護士、社会保険労務士、中小企業診断士、労働衛生コンサルタント、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント等が挙げられています。契約書には、カスハラ対策に関する相談、研修、体制整備など、依頼内容が分かる記載を残します。

申請前に決めたい取組の選び方

3つの取組は、費用の大きさではなく、今の課題との距離で選びます。電話や対面の記録が残らず、事実確認に時間がかかっている会社は録音・録画環境が候補になります。対応内容の記録や相談の振り分けに課題がある会社は、AIシステムの導入を検討できます。社内で対応方針を決める人がいない会社は、外部人材の活用が候補です。

迷った場合は、次の順で確認します。

  1. どの場面で従業員が対応に困っているか
  2. 今の運用で何が記録されていないか
  3. 誰が判断し、誰へ報告するか
  4. 取組の実施日を証明できるか
  5. 社内周知と運用ルールを残せるか

制度に合わせて機器やサービスを先に購入すると、カスハラ対策としての必要性を説明できないことがあります。先に課題を整理し、その後で取組と証拠書類を決めてください。

事前エントリー前にGビズIDを準備する

カスハラ奨励金の申請準備を対象要件、GビズID、マニュアル、実践取組、事前エントリーの順で示す図
申請前は、対象要件から事前エントリーまでの準備順を確認します。

事前エントリーにはGビズIDプライムアカウントが必要です。第2回の受付は10月23日からですが、ID取得や社内資料の整理を受付開始後に始めると間に合わない可能性があります。

今回の募集は5,000件で、受付期間中はいつでもエントリーできます。先着順ではありませんが、受付件数を超えた場合は抽選です。事前エントリーを通過した事業者だけが、後日Jグランツで支給申請を行います。事前エントリーの完了だけで、40万円の支給が確定するわけではありません。

必要書類の提出後、支給決定まで6か月以上かかる見込みです。資金繰り上、すぐに入金される制度ではない点も確認しておきます。

よくある質問

第2回の受付は先着順ですか?

先着順ではありません。2026年10月23日10時から11月6日17時までの受付期間中にエントリーできます。受付件数を超えた場合は抽選です。

マニュアルを作れば40万円を受け取れますか?

受け取れません。マニュアルの整備と周知に加え、録音・録画環境、AIを活用したシステム、外部人材の活用のいずれかが必要です。

セミナーに参加した費用は対象ですか?

他社が主催するセミナーへの参加は、外部人材の活用として対象外です。自社が主催し、講師と契約して実施する研修などとは扱いが異なります。

GビズIDは後から取得できますか?

事前エントリー時点でGビズIDプライムアカウントが必要です。取得に時間がかかるため、受付開始前に準備してください。

事前エントリーをすれば支給されますか?

支給は確定しません。事前エントリーを通過した後、Jグランツで支給申請を行い、審査を受ける必要があります。

まとめ

この奨励金は、カスハラ対策のマニュアルだけでなく、記録、相談、研修、外部支援などの実践まで進める企業を対象にしています。40万円という金額だけで申請を決めるのではなく、自社の現場で何が不足しているかを先に確認してください。

今から始める作業は、対象要件の確認、GビズIDの準備、マニュアルと周知記録の点検、実践的な取組の選定です。第2回の募集要項が公開されたら、日付や提出書類の変更がないかを必ず確認します。

弊所では、カスハラ対策マニュアルの整備、社内周知、外部人材の活用に関する準備を支援しています。自社の取組が制度の要件に合うか、申請前に確認したい場合はご相談ください。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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