東京都テレワーク定着強化奨励金は申請前の社内整理が要点

テレワーク定着強化奨励金と社内ルール整備の要点を示すアイキャッチ画像

テレワークを続けてきたものの、部署ごとに運用が違う、出社する従業員との不公平感が残る、制度が曖昧なまま回っている。中小企業では、この状態が長く続きがちです。端末を配っただけでは定着しません。就業ルール、社内周知、現場の納得までそろって初めて回り始めます。

東京都の令和8年度テレワーク定着強化奨励金は、そうした会社向けの制度です。機器購入の補填を主眼にした制度ではなく、自社に合うテレワークルールをつくり、試し、見直し、社内へ落とし込む流れに奨励金を出す仕組みです。

この記事では、事業者向けに制度の骨子、向いている会社、申請前に決めておきたい点を整理します。基準日は2026年6月3日です。

目次

先に結論

先に要点を言うと、この制度はテレワークを始める会社向けというより、テレワークを定着させるために社内ルールを作り直したい会社向けです。

特に、次の状態に当てはまる会社は検討しやすいです。

  • 都内に事業所があり、常時雇用する労働者が2人以上999人以下である
  • テレワーク東京ルール実践企業宣言に登録し、テレワーク推進リーダー設置表示のある宣言書を発行できている
  • 従業員調査、社内検討、試行、見直し、社内周知まで順番どおり進められる
  • テレワークできない従業員への配慮も含めて制度を整えたい
  • 申請前にGビズIDやJグランツの準備を前倒しで進められる

逆に、パソコン購入費だけを出してほしい、締切直前に一気に出したい、前年までに同奨励金を受けている、という会社には合いにくいです。制度の中心は、物の購入ではなく、運用設計と社内定着です。

制度の骨子を短く押さえる

この制度の骨子は、テレワーク定着に向けた社内ルールづくりを段階的に進めた会社へ、最大40万円を支給する点にあります。

東京しごと財団の案内ページで押さえておきたい事実は次のとおりです。

  • 対象は、常時雇用する労働者が2人以上999人以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等
  • テレワーク東京ルール実践企業宣言への登録と、テレワーク推進リーダー設置表示のある宣言書の発行が前提
  • Step1からStep5までを項目順にすべて実施する必要がある
  • 基本部分は20万円
  • 基本部分の要件を満たし、テレワークができない従業員の不公平感をやわらげる制度や規程等を導入した場合は20万円加算され、最大40万円になる
  • 受付期間は2026年5月29日から2027年2月26日まで
  • 電子申請が案内されており、利用にはGビズIDの取得が必要
  • 代理人による代行申請はJグランツではできず、委任がある場合は郵送申請のみ受け付け

ここで見落としやすいのは、単に制度を作ればよいわけではない点です。従業員調査を行い、社内でプロジェクトチームを組み、試行と見直しを挟んだうえで社内周知まで進める流れが求められています。

Step1からStep5まで何をするのか

テレワーク定着のための調査・検討・試行・見直し・周知の流れを示す図
テレワーク定着に向けた5段階の流れ

流れを短く言うと、現状把握から制度化までを順番に進めます。

Step1は従業員調査です。現場の困りごとやニーズを拾わずに制度を作ると、社長や管理部だけが納得したルールになりがちです。Step2では社内にプロジェクトチームを置き、調査結果をもとに解決方法を決めます。この段階で、メンバー向けの研修動画受講も必須です。

Step3では決めた方法を試し、Step4で必要に応じて見直します。Step5で社内周知まで終えて申請の形に入ります。途中を飛ばせないので、制度を一枚紙でまとめるだけの案件とは考えない方が安全です。

加算20万円の見方

出社する従業員への配慮と不公平感への対応を示す図
出社する従業員への配慮も制度設計の論点

加算部分は、出社する従業員との不公平感にどう向き合うかまで見ている点が特徴です。

案内ページでは、柔軟な労働時間制度や出社手当制度など、不公平感の緩和に資する制度や規定等を導入した場合に20万円が上乗せされます。テレワーク実施者だけの利便性で終わらせず、出社側の納得まで設計する視点が必要です。

ここは止まりやすい論点です。テレワーク制度だけ整えても、出社する従業員の負担感や評価の見えにくさは残ります。加算を狙うかにかかわらず、先に話し合った方が後戻りを減らせます。

どんな会社が向いているか

向いているのは、テレワークの是非を議論する段階ではなく、運用の粗さを直したい会社です。

テレワークはあるが運用が部署ごとに違う会社

制度の対象として相性がよいのは、すでに何らかのテレワークを行っているものの、部署や上長ごとに判断基準がばらついている会社です。

申請日数、在宅可能な業務、情報共有の方法、勤怠の扱い、評価の見方がそろっていないと、制度は続きません。こうした会社では、機器よりルールの整理が先です。

出社する従業員との不公平感が残っている会社

出社と在宅が混ざる会社ほど、この制度の意味が出ます。

出社する人だけが電話や来客を受ける、雑務が集中する、通勤負担に差が出る。この状態を放置すると、テレワーク制度そのものへの不満に変わります。加算部分で触れられている不公平感の緩和は、単なるおまけではありません。制度を続ける前提条件に近い論点です。

規程改定と社内周知までやり切れる会社

この制度は、考えるだけで終わる会社には向きません。

詳細ページでは、Step2やStep4で決めた内容に規定改正が必要なら、就業規則やテレワーク規程等へ反映するよう案内されています。Step5では社内周知も必要です。つまり、会議で方向性だけ決めて終わりでは足りません。文書化、反映、周知まで進められる体制が必要です。

就業規則や勤怠運用まで含めて整理し直したい場合は、人事労務のデジタル化サービスのように、運用設計と実装を一緒に見られる支援も相性があります。

申請準備を前倒しできる会社

締切に間に合うかは、制度理解より準備速度で決まる場面があります。

Jグランツを使う場合はGビズIDが必要です。案内ページでも、ID発行まで時間がかかるため余裕をもって準備するよう示されています。ID取得が間に合わない場合に期日の猶予はありません。制度内容に納得してから動き出すより、検討と並行して申請基盤を整えた方が早いです。

テレワーク制度の論点整理自体がまだ曖昧なら、補助金申請前の課題整理という意味で、デジファースト東京は補助金申請の前に使いたい東京都の無料デジタル化支援のような支援策も見比べると判断しやすくなります。

先に見送りや再設計を考えたいケース

制度に当てはまりにくい会社は、早めに見送りや組み直しを決めた方が無駄が出ません。

機器購入や通信費補填だけを期待している会社

この制度は、物の購入中心で考えるとズレやすいです。

案内の中心は、従業員調査、社内検討、試行、見直し、周知です。機器や費用の単純補填を期待していると、制度の組み方自体が合いません。設備投資色の強いテーマなら、別制度を見た方が早いことがあります。

同奨励金をすでに受けている会社

受給歴の確認は早い段階で済ませるべきです。

詳細ページでは、令和6年度から令和8年度に本奨励金を受給した企業等や申請中の企業等は申請できないと案内されています。総務担当と経営側で認識がずれていることがあるので、過去申請の有無は最初に確認した方が安全です。

締切直前で体制が整っていない会社

良い制度でも、社内体制がないと前へ進みません。

従業員調査、プロジェクトチーム設置、研修受講、試行、規程見直し、社内周知を短期間で詰め込むのは重いです。加えて、電子申請ならGビズID、郵送なら必要書類の整備が要ります。締切だけ見て走ると、現場が置いていかれやすくなります。

申請前に社内で決めておきたいこと

申請前に次の論点を決めておくと、制度の使い方がかなり明確になります。

  • どの部署のどの業務でテレワーク運用が詰まっているか
  • 誰をプロジェクトチームに入れるか
  • 調査で何を聞くか
  • 試行期間中に何を検証するか
  • 出社する従業員との不公平感にどう手当てするか
  • 規程改定が必要な論点は何か
  • 社内周知をどの文書とどの説明方法で行うか

ここを曖昧にしたまま申請だけ急ぐと、通った後の運用で苦しくなります。制度申請をゴールにせず、社内で回るルールにできるかまで見ておくべきです。

FAQ

制度の問い合わせ前に出やすい疑問を整理します。

対象になるのはどんな会社ですか

常時雇用する労働者が2人以上999人以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等です。加えて、テレワーク東京ルール実践企業宣言への登録など、ほかの要件もあります。

奨励金額はいくらですか

基本部分が20万円です。そこに、不公平感の緩和に資する制度や規程等を導入した場合は20万円が加算され、最大40万円です。

電子申請は代理人でもできますか

できません。詳細ページでは、申請企業等の在籍者以外によるJグランツでの代行申請は不可とされています。

GビズIDは必須ですか

Jグランツで電子申請するなら必要です。ID発行まで時間がかかるため、使う可能性があるなら早めに動いた方が安全です。ID取得が間に合わない場合、期日の猶予はありません。

以前この奨励金を受けた会社でも申請できますか

できません。令和6年度から令和8年度に本奨励金を受給した企業等や申請中の企業等は対象外と案内されています。

何から始めればよいですか

従業員調査の設計と、社内のプロジェクトチームづくりから入るのが自然です。その後の規程見直しや社内周知にもつながります。

テレワーク制度の整備を進めたい企業様へ

テレワークは導入した瞬間より、続ける段階で差が出ます。申請の可否だけでなく、就業規則、勤怠、情報共有、出社する従業員との役割分担まで含めて整理したい場合は、早い段階で全体像を決めた方が手戻りが減ります。

弊所では、労務、経営、ITの観点をまたいで、制度の読み取りから運用整理まで対応しています。初期の論点整理からご相談いただけます。

参考: https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/telework/tele-teichakukyoka/R8.html

参考: https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/telework/tele-teichakukyoka/boshu/R8.html

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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