パート、アルバイト、契約社員から待遇差について質問されたとき、会社は感覚で返してはいけません。賃金、賞与、手当、教育訓練、福利厚生、正社員転換、相談窓口まで、説明できる資料を先に確認しておく必要があります。基準日: 2026年8月26日時点。
厚生労働省と都道府県労働局は、職場での待遇に疑問を感じた方向けのリーフレットを公開しています。労働者向けの資料ですが、会社側が読む価値もあります。従業員がどこを見て相談に進むのかが分かるからです。
2026年10月からは、雇入れ時や契約更新時の明示項目に、待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨が加わります。小規模企業でも、パートや有期契約の従業員を雇用しているなら、説明資料と社内窓口を今のうちに確認しておきたいところです。
従業員向けリーフレットは会社側の点検表にもなる

今回のリーフレットは労働者向けですが、会社が先に点検する材料として使えます。労働局に相談される前に、質問されやすい項目を会社側で確認できるためです。
リーフレットでは、パートタイム、アルバイト、契約社員で働く方に向けて、7つの確認項目が示されています。労働条件が文書で示されているか。賃金制度や教育訓練制度の説明があるか。正社員との違いを尋ねたときに説明してもらえるか。相談窓口があるか。
これは従業員だけのチェックではありません。会社に置き換えると、次の確認になります。
- 雇入れ時や契約更新時に、労働条件通知書を渡しているか
- 昇給、退職手当、賞与、相談窓口を文書で示しているか
- 賃金制度や教育訓練制度を説明できる状態か
- 正社員との待遇差について、理由を説明できるか
- 食堂、休憩室、更衣室などの利用ルールが不合理になっていないか
- 正社員転換の機会を案内できるか
- 社内で相談を受ける窓口や記録方法があるか
従業員から聞かれてから資料を探すと、回答までに時間がかかります。説明が遅れるほど、従業員は労働局への相談を考えやすくなります。先に点検しておく方が、社内で解決できる余地を残せます。

2026年10月から明示項目が増える
2026年10月からは、待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨が明示項目に加わります。パートや有期契約の従業員を採用、更新する会社は、労働条件通知書の文言をそのままにしない方が安全です。
リーフレットでは、雇用された際や契約更新の際に文書で示された労働条件の項目として、昇給、退職手当、賞与の有無、相談窓口に加え、2026年10月から追加される項目が示されています。
追加されるのは、待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨です。つまり、正社員との賃金や休暇制度の違いについて説明を求められることを、最初から文書で伝える流れになります。
ここで会社が確認したいのは、単に通知書のひな型を直すことだけではありません。文言を足しても、実際に質問されたときに答えられなければ意味がありません。誰が説明するのか。どの資料を見るのか。回答内容をどこに残すのか。この3点まで決めておく必要があります。
とくに従業員数が少ない会社では、社長や店長がその場で答えることが多くなります。回答が担当者ごとに変わると、従業員の不信感につながります。労働条件通知書、賃金台帳、就業規則、雇用契約書を見ながら、説明できる範囲を決めておくべきです。
待遇差の説明は賃金だけでは足りない

待遇差の説明は、基本給や時給だけの話ではありません。賞与、退職手当、手当、教育訓練、福利厚生施設、休暇制度、正社員転換まで広がります。
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパートタイム労働者、有期雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止されています。職務内容、責任の程度、人材活用の仕組み、その他の事情を踏まえて確認する必要があります。
たとえば、正社員には通勤手当を出しているのに、パートには一律で出していない場合です。業務内容や勤務実態を見ずに、雇用区分だけで差を付けていると説明が苦しくなります。賞与や慶弔休暇も同じです。名称が正社員向けに見えても、実態によっては確認が必要です。
教育訓練も見落としやすい項目です。正社員と同じ仕事を任せているのに、必要な研修を受けさせていない場合、従業員から見ると待遇差として受け止められます。食堂、休憩室、更衣室の利用も、会社側では細かい話に見えますが、リーフレットでは確認項目に入っています。
小規模企業で最初に見るなら、次の順番が現実的です。
- 雇用区分ごとの労働条件通知書
- 就業規則や賃金規程
- 実際の賃金台帳
- シフト表や勤務実態
- 教育訓練、福利厚生、正社員転換の案内資料
書類上のルールと実際の運用が違う場合、説明で詰まります。まずは、今の運用をそのまま説明できるかを確認してください。
質問されたときの回答ルートを決めておく
従業員から待遇差について聞かれたら、すぐに結論だけ返すより、確認する資料と回答者を決めて返す方が安全です。説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されています。
回答の入口は、次の形にしておくと扱いやすいです。
- 相談を受ける窓口を決める
- 質問内容を記録する
- 比較対象となる正社員の範囲を確認する
- 賃金、手当、休暇、教育訓練ごとに資料を見る
- 回答日と回答内容を記録する
その場で答えられる内容なら、丁寧に説明すれば足ります。判断に迷う内容なら、確認してから回答すると伝えれば問題ありません。避けたいのは、質問した従業員を面倒な人として扱うことです。勤務シフトを減らす、契約更新で不利に扱う、評価で不利益を与えるような対応は避けなければなりません。
社内で自主的に解決できない場合、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で相談や紛争解決援助が利用できます。会社としては、そこに進む前に、社内で説明できる資料を整えておく方がよいです。
労働条件通知書と説明資料を先に確認する
今回のリーフレットを見た会社が最初にやることは、労働条件通知書と説明資料の確認です。新しい制度対応を大げさに始めるより、今の書類で説明できるかを見た方が早いです。
確認したいのは、次の5点です。
- パート、アルバイト、契約社員に労働条件通知書を渡しているか
- 昇給、退職手当、賞与、相談窓口が書かれているか
- 2026年10月以降の明示項目を入れる準備があるか
- 正社員との待遇差を説明する資料があるか
- 相談を受けたときの記録方法が決まっているか
労働条件通知書は渡しているが、相談窓口が古い担当者のまま。賃金規程はあるが、パート向けの手当の扱いが曖昧。正社員転換制度はあるが、誰にも案内していない。こうした状態は、小規模企業でも起きます。
完璧な制度設計から入る必要はありません。まずは、従業員から聞かれたときに、この資料を見て説明しますと言える状態にすることです。そこまでできれば、労働局相談に進む前の社内対応がしやすくなります。
待遇説明で迷う前に相談したいとき
パートや契約社員の待遇説明は、労働条件通知書の一文追加だけでは終わりません。賃金、手当、休暇、教育訓練、相談窓口まで、今の運用と文書が合っているかを確認する必要があります。
弊所では、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、パート・有期契約社員の待遇説明について確認をお手伝いしています。2026年10月改正に向けて、まず何を直すべきか確認したい場合は、早めにご相談ください。
FAQ
パートやアルバイトにも待遇差の説明は必要ですか
必要です。正社員との待遇差について説明を求められた場合、会社は内容や理由を説明できるようにしておく必要があります。
2026年10月から何が変わりますか
雇入れ時や契約更新時の明示項目に、待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨が追加されます。
労働条件通知書だけ直せば足りますか
足りません。通知書の文言に加えて、賃金、手当、休暇、教育訓練、相談窓口を説明できる資料が必要です。
従業員から質問されたら、その場で答える必要がありますか
その場で無理に結論を出す必要はありません。確認する資料と回答時期を伝え、回答内容を記録しておく方が安全です。
説明を求めた従業員を契約更新で不利に扱えますか
扱えません。説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されています。
小規模企業でも相談窓口は必要ですか
必要です。専任部署がなくても、誰が相談を受け、どこに記録するかは決めておくべきです。

