タイムカード集計が招く労務リスクとクラウド勤怠による解決法

あるメーカーでは、毎月の給与計算にタイムカードの目視確認とエクセル入力を用いていました。
しかしある日、退職した従業員から未払い残業代180万円の支払いを求める内容証明郵便が届くという事案が発生しています。
15分単位の切り捨てという長年の会社の慣例が、違法な労働時間の搾取と見なされた結果です。
慌てて弁護士に相談するも、手書きの修正印が残るタイムカードでは反証の余地がないと告げられます。
在籍する20名全員に同じ計算が波及すれば、賠償額は一気に数千万円規模に膨れ上がるでしょう。

これは今の日本で頻発している現実の労務リスクと言えます。
紙のタイムカードに依存した勤怠管理は、企業の存続を脅かす見えない爆弾を抱え込んでいる状態と等しいのです。
本記事では、このアナログな管理が引き起こす具体的なリスクと、クラウドシステムを活用した解決策について詳しく解説いたします。

目次

アナログ勤怠管理が抱える深刻な3つのリスク

組織規模が拡大していく中で、創業期と同じ手作業の管理を続けているでしょうか。
もしそうなら、以下のような問題が近い将来、表面化してくるのは時間の問題となります。

手作業の集計によるヒューマンエラーの発生

どんなに慎重な見直しによるダブルチェックを行っていたとしても、人間の手による作業には計算間違いが付いて回ります。
担当者に悪意がない計算上のミスであったとしても、法的な扱いは変わりません。
正しい金額の残業代が支払われていない状態が継続していれば、それは労働基準法違反の行為として扱われるのです。

現在、未払い賃金等の請求権の時効は従来の2年間から3年間に延長されております。
これは経営にとって何を意味するのでしょうか。
過去3年分に遡って未払い分の支払い命令を受けるリスクが、会社に重くのしかかるということです。
わずかな計算ミスや時間外割増の認識違いであっても、数年間分が合算されれば企業の資金繰りに直結する影響を及ぼしかねません。

端数処理による潜在的債務の拡大

冒頭の事例のように、遅刻や残業の時間を慣例的に15分単位で切り捨てる丸め処理は、非常に危険です。
これは労働基準法の原則において違法とされています。
現場のタイムカードを目視で集計する際、計算を楽にするために毎日端数を切り捨てるといった行為。
それは従業員の労働時間を不当に削っていることと見なされるわけです。

たった1日5分の切り捨てであっても、従業員全員分が数年間にもわたって積み重なった結果は軽視できません。
多くの未払い賃金に加えて遅延損害金として付加金まで企業にのしかかる事例が、全国で発生しているのが現状と言えます。
労働基準法では労働時間は1分単位での把握が要求されており、都合の良い独自のルールが許容されることは決してありません。

客観的記録としての信頼性の欠如

紙のタイムカードによる運用の場合、手書きでの修正が容易に行えてしまいます。
また、出勤時に同僚がまとめて打刻するといった不正な代理打刻を物理的に防ぐことは困難を極めるでしょう。

厚生労働省のガイドラインにおいても、使用者が自ら現認するか、客観的な記録によって労働時間を適切に管理することが求められています。
万が一トラブルが発生して裁判などに発展した際、鉛筆書きの修正箇所が散見されるタイムカードが証拠として提出された場面を想像してみてください。
企業が適法に隙なく管理していたと証明する客観的な証拠としては認められず、会社側が不利な状況に追い込まれます。
企業として自らの身を守るためにも、修正履歴が明確に残るデジタルの客観的なデータは必須のものとなっています。

事務作業が奪う機会損失という経営の死角

労務管理のアナログ化によるリスクは、法的なトラブルだけにとどまりません。
経営の視点に立って物事を考えた際、企業にもたらされる損失は別の場所にも存在しています。
それは単純事務作業によって絶え間なく奪われ続ける経営者の時間そのものです。

本来の業務に投資すべき経営時間の喪失

経営者の時給は本来、新たな顧客を開拓する営業活動や、新規事業のプランニングに集中して投資されるべきものではないでしょうか。
そして強い組織を作るための採用活動など、会社の未来における利益を創出する根幹業務にこそ当てられるべきはずです。

しかし現実の光景としてはどうなっているかに目を向けてみましょう。
毎月の給与計算や、タイムカードの不整合を確認する作業に追いまくられる月末の風景。
本来生み出されるはずの利益が手の中で溶けて消えてしまっているのです。
これは財務諸表には数字として現れることのない、見えにくく、かつ企業成長を阻害する見えないコストの流出を表します。

勤怠の不透明さが招く従業員との信頼関係の毀損

自分自身の残業時間が正確に計算されているのかどうかが不透明な状態は、大きな問題を生み出します。
それは働く従業員に対して会社への不信感を植え付ける結果に。
自分たちの労働が正当に評価されず、対価として適正に還元されていないのではないかという疑念に繋がります。
この疑念の種が、やがて職場の志気や連帯感、モチベーションを大きく低下させていくのです。

その結果として、コストをかけて採用し育て上げた優秀な人材が定着せずに他社へ流出してしまうケースも少なくありません。
この人的損失を招き、採用難のさらなる悪循環を引き起こす要因ともなっています。

クラウド勤怠管理システムがもたらす組織解決

これまで述べてきた問題を一挙に解決へと導く手段は存在しますか。
企業の安定的な発展を支えるための合理的で効果的な方法が、クラウド勤怠管理システムの導入です。
これは単なるITツールの導入事例として片付けるものではありません。
前向きな経営改革の第一歩として位置づけられる有効な手段と言えます。
多様なメリットを順番に解説いたしましょう。

自動集計による適法性の担保とリスクの排除

クラウドシステムを現場に導入すれば、スマートフォンやパソコンでの打刻データが即座にインターネット経由で自動的に集計されます。
リアルタイムでシステム上に安全に保管される仕組みが構築されます。

労働基準法に基づいた残業時間計算や休日出勤の取り扱い、深夜割増の計算などがプログラム通り正確に処理されるという点もポイントです。
手作業特有の人為的なミスが入り込む余地が消滅します。
また、頻繁に行われる法令の細かい改正にも、クラウド上で自動的に対応するため、企業側は常に適法な状態を維持し続けることが約束されるわけです。
経営陣が日々直面する法的制裁のリスクから解放される大きな利点をもたらします。

労働時間の一元管理と残業の抑制

以前の管理手法では、月末になってタイムカードを集め終わるまで全体の状況が見えませんでした。
誰がどれくらいの時間残業しているのかリアルタイムで把握することができなかったのではないでしょうか。

新しくクラウドシステムを採用すれば、状況は一変します。
管理画面にログインするだけで全従業員の労働時間や今月の累積残業時間が、ひと目で可視化されるからです。
法律で定められた残業時間の上限ラインに達する前に超過を知らせる自動通知アラートが設定できる機能も備わっています。
過重労働による健康被害を未然に防ぐことが可能となり、法令違反リスクを回避することに直結するのです。

業務効率化がもたらす事務負担の軽減

これまで担当者が毎月数日がかりで行い疲弊していた有給休暇の管理業務の負担は無視できません。
給与計算ソフトへのデータ振り替え作業が、これまで以上に短時間で行えるようになります。

従業員による休暇申請から上長による承認、付与日数の管理まで全てWebブラウザ上で完結する時代です。
社内で紙の申請書を印刷し持ち回ってハンコを押す必要がなくなります。
さらに多くのクラウドシステムは、主要な給与計算ソフトとボタン一つで直接データ連携できるAPI機能を備えていることも特徴的。
給与締め日の確認作業にかかる運用コストを大幅に削減することが十分に可能と言えるでしょう。
経営陣や管理担当者は基幹業務にリソースを割き、生産性向上を実現できるのです。

導入費用の壁を越えるための助成金の効果的活用法

ここまでクラウド型の勤怠システムの果たす役割を説明してまいりました。
新しいITシステムの導入には初期費用や毎月のランニングコストがどうしてもかかってしまいます。
それを懸念し、導入を足踏みされる企業も多いのが現実です。

現在国や各自治体は中小企業のデジタル化や生産性向上を後押しするために、手厚い助成金や補助金の支援枠組みを用意しています。
IT導入補助金を筆頭に、業務改善助成金など現在も数多くの制度が進められているのをご存知でしょうか。
これらの公的な補助制度を企業の状況に合わせて的確に適用すれば、大きな効果を発揮します。
システムの初期の手厚い導入費用などの実質的な経営負担を抑えることが実現できるのです。

ただし、これらの制度要件は頻繁に内容が更新され複雑さを増しています。
本業で多忙な経営陣がすべてを自力で把握し、書類の不備なく申請手続きを完遂することは大きな困難を伴います。
専門家の知見を活用し、貴社の状況に最も適した助成金を提案から申請、労働環境の改善までを一貫して支援させることが最も安全な道となるはずです。

まとめ

紙のタイムカードで行う毎月のアナログな集計作業のリスクについて見てまいりました。
会社に新たな活力を生まないばかりか、大切な資産である時間を絶えず奪い続ける見えない脅威と言えるでしょう。

従業員が長期にわたって安心とやりがいを感じて労働できるクリアな環境を構築するためには、デジタル化を積極的な経営判断として進める必要があります。

弊事務所では、貴社が現在の経営環境で抱えているリアルな労務リスクを客観的に診断いたします。
そのヒアリング結果に基づき、単なるツールの販売にとどまらず、自社の実質コストの削減を目指した各種公的助成金を含めた経営提案を実施中。
導入後に現場の従業員の方々に活用されるまでの運用定着を、伴走型で丁寧にお手伝いしていくサポート体制を整えております。

現在の労務管理体制に少しでもご不安がある場合は、ぜひ弊事務所の初回無料相談をご活用ください。貴社の状況に合わせた適切なリスク診断と、最適なクラウドシステム導入へのステップをご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・キャッシュフローコーチ・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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