健康保険料率3月分から改定。給与から控除はいつから?給与計算で間違いやすいポイントを社労士が解説

目次

はじめに

2026年3月分から、協会けんぽの健康保険料率が改定されました。

3月分から変わるという通知を受け取りながら、何月の給与から天引き額が変わるのかと迷う担当者は少なくありません。3月支払いの給与なのか、4月支払いの給与なのか。正解は事業所によって異なります。

この3月分という表現、迷いますよね?正しく理解しないまま給与計算を行うと、旧料率のまま控除し続けてしまったり、誤ったタイミングで新料率に切り替えたりするミスにつながります。この記事では、健康保険料率の3月分からという表現の意味と、自社の給与計算ルールに照らした正しい適用タイミングを解説します。

健康保険料率が3月分から変わる仕組み

協会けんぽの健康保険料率は毎年3月に改定されます。厳密には3月分の保険料から新料率が適用されるという意味で、3月分・4月納付分から、という表現がよく使われます。

この3月分と4月納付分という2つの言葉が同時に登場するため混乱しやすいのですが、社会保険の保険料には対象月と納付月という2つの時間軸があります。

健康保険料は翌月末が事業主の納付期限です。3月分の保険料であれば、事業主は4月末までに協会けんぽへ納付します。これが3月分・4月納付分という表現の意味です。

改定は3月分の保険料から適用されるため、令和7年度の料率が使えるのは2月分の保険料(3月納付)までとなります。

3月分からとはいつの給与から天引きが変わるか

ここが混乱するタイミングなのですが、保険料の対象月と給与からの天引きタイミングは一致しない場合がるという点です。このズレが実務担当者が最も混乱するポイントです。

給与からの社会保険料控除には2つの方式があります。

翌月控除

3月分の保険料を翌月である4月支払いの給与から控除する方式です。多くの事業所が採用しています。

新料率が初めて給与から引かれるのは4月支払いの給与です。

当月控除

3月分の保険料を3月支払いの給与から控除する方式です。

新料率が初めて給与から引かれるのは3月支払いの給与です。

どちらの方式かは就業規則や給与規程に定められています。確認できない場合は、給与明細で健康保険料が何月分として控除されているかを確認してください。

控除タイミングの比較

控除方式3月分保険料の控除タイミング
翌月控除4月支払いの給与から
当月控除3月支払いの給与から

自社がどちらの方式かを確認した上で、新料率の切り替えタイミングを把握してください。

令和8年度の改定内容

健康保険料率(令和8年3月分から)

協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なります。令和8年度は全国的に引き下げ方向で、40都道府県で引き下げとなりました。全国平均は9.9%で、前年度から0.1%の引き下げです。

都道府県によって改定率は異なりますので、自社の適用率は本社または事業所が所在する都道府県の料率を確認してください。

出典:令和8年度保険料額表|全国健康保険協会

参考までに東京都の保険料率は9.91%から9.85%へ引き下げられています。

介護保険料率(令和8年3月分から)

一方、介護保険料率は全国一律で改定され、令和8年3月分から1.62%に引き上げられます。前年度は1.59%でした。

介護保険料は40歳以上64歳以下の被保険者のみが対象です。健康保険料率の変更と同じタイミングで反映が必要です。

子ども・子育て支援金(令和8年4月分から)

令和8年4月分から、子ども・子育て支援金の徴収が始まります。健康保険料と合わせて給与から控除される新しい項目です。

令和8年度の支援金率は0.23%で、健康保険と同様に労使折半です。子どもの有無にかかわらず、医療保険加入者全員が負担します。

翌月控除の事業所では5月支払いの給与から、当月控除の事業所では4月支払いの給与から控除が始まります。

2026年春の保険料変更スケジュール

変更内容適用開始翌月控除の場合当月控除の場合
健康保険料率改定3月分から4月支払い給与3月支払い給与
介護保険料率改定3月分から4月支払い給与3月支払い給与
子ども・子育て支援金4月分から5月支払い給与4月支払い給与

健康保険・介護保険の料率変更と子ども・子育て支援金の新設が春に集中しています。保険の種類によって切り替えタイミングがずれるため、3月と4月それぞれで確認が必要です。

給与計算担当者が確認するチェックリスト

3月・4月の給与計算前に確認すべき事項を整理します。

3月支払い給与の処理時

確認項目対応
自社の控除方式を確認翌月控除か当月控除か
当月控除の場合健康保険・介護保険を新料率に切り替える
翌月控除の場合3月支払いはまだ旧料率を使用する

4月支払い給与の処理時

確認項目対応
翌月控除の場合健康保険・介護保険を新料率に切り替える
子ども・子育て支援金の開始当月控除は4月から、翌月控除は5月から徴収開始
給与明細への項目追加子ども・子育て支援金の控除項目が追加されているか確認
給与計算ソフトの設定料率が自動更新されているか、手動設定が必要かを確認

給与計算ソフトはソフトによって自動更新されるものと手動設定が必要なものがあります。自動更新のソフトでも、更新のタイミングや反映方法を処理前に確認しておくと設定漏れを防げます。

旧料率のまま誤って計算してしまうと、後から差額精算が必要になり、従業員への説明と修正の手間が発生します。3月・4月の給与計算着手前に設定の確認を行うのが最も手戻りが少なくなります。

まとめ

健康保険料率の3月分から改定という表現は、3月分の保険料から新料率が適用されるという意味です。給与からの実際の控除タイミングは、翌月控除の事業所では4月支払いの給与、当月控除の事業所では3月支払いの給与となります。

令和8年春は健康保険・介護保険の料率改定と子ども・子育て支援金の新設が同時期に集中しています。変更のタイミングが保険の種類によって異なるため、3月・4月の給与計算前に自社の控除方式と給与計算ソフトの設定を確認してください。

弊所へのご相談

給与計算は従業員の生活の基盤となる重要な業務です。一方、制度改正等の影響でとても複雑な業務であり、ミスが起こりやすい業務でもあります。給与計算のミスが発覚すると、従業員との信頼関係の悪化に繋がる可能性もあります。

弊所では給与計算や社会保険手続き全般のサポートを行っています。給与計算の実務でお困りの場合や、給与計算業務のアウトソースをお考えの場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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