GW明けから6月にかけて、遅刻が増えた、返事が遅い、表情が重い、ミスが続く。こうした変化が出たとき、社長が最初にやるべきことは、根性論で押すことでも、病名を決めつけることでもありません。事実を整理し、本人が話しやすい場を作り、業務負荷を調整し、必要なら外部につなぐことです。初動が遅れると、欠勤、休職、退職まで一気に進みます。小規模企業ほど一人の不調が現場全体に響くため、早い段階で手を打つ方が経営コストは小さく済みます。
5月病や6月病は病名ではなく異変のサインです
結論から言うと、社長が見るべきなのは言葉そのものではなく、働き方と体調の変化です。
5月病や6月病は通称であり、正式な診断名ではありません。新年度の環境変化、業務量、人間関係、通勤負担、生活リズムの乱れが重なり、心身に不調が出やすい時期を指す言い方です。ここで社長が先に決めつけると、本人が状況を話しにくくなります。
先に確認したい変化
最初に見るのは、感想ではなく事実です。
- 遅刻、早退、欠勤が増えていないか
- 以前より返信や報告が遅くなっていないか
- ミス、やり直し、抜け漏れが急に増えていないか
- 表情、声量、身だしなみ、食欲などに変化がないか
- 残業や持ち帰り対応が偏っていないか
この段階で必要なのは、記録を持つことです。曖昧な印象だけで面談に入ると、本人も上司も話が噛み合いません。
社長が取るべき初動対応

初動は、観察、対話、調整、接続の順で進めると崩れにくいです。
個別に短く声をかける
最初の面談は、人前でやらないことが要です。
周囲の前で詰めると、防御反応が強く出ます。会議室や静かな場所で、最近少し疲れて見える、業務量で詰まっている点はないか、眠れているか、通勤や家庭事情で困りごとはないか、という順で短く確認してください。問い詰めるより、事実確認に寄せた方が本音が出やすくなります。
業務負荷を一時的に軽くする
異変が見えたら、仕事の量と締切をいったん見直します。
担当が少ない会社ほど、本人が抜けると困るため、無理に抱えさせがちです。そこを続けると、数日で回復したかもしれない不調が長引きます。期限の近い業務を分ける、対人負荷の高い仕事を外す、朝一の定例を減らすなど、小さな調整でも差が出ます。早い段階で業務を切り分けるほど、欠勤や引き継ぎの混乱を抑えやすくなります。
受診や相談先を案内する
社長が診断役になる必要はありません。つなぐ役に徹する方が安全です。
不眠、食欲低下、涙が止まらない、出社前に動けないといった状態が出ているなら、医療機関の受診を勧めてください。産業医がいない小規模企業でも、地域産業保健センターなど外部相談先を使える場面があります。社内だけで抱えるより、外部の視点を早く入れた方が判断しやすくなります。予防の仕組みづくりも含めて見直したい場合は、ストレスチェック義務化で中小企業がいま準備すべき費用・手順・よくある疑問も合わせて確認してください。

記録を残して次回面談を決める
一度話して終わりにしないことが大事です。
面談日、本人の申出、会社が取った対応、業務調整の内容、次回確認日を簡単に残してください。翌週に再確認の場を置くだけでも、悪化の見逃しを減らせます。小規模企業では、社長が気にしていたのに忙しさで流れた、という失敗が起きやすいです。
やってはいけない対応
避けるべき対応を外すだけでも、悪化リスクはかなり下がります。
根性論で押し切る
気合いで乗り切れ、みんな疲れている、という返しは逆効果です。
本人は相談先を失い、隠して出勤を続けます。その結果、ある日突然来なくなる流れに入りやすくなります。
病名を決めつける
うつだろう、甘えだろう、と社長が決めるのは危険です。
診断は医療の領域です。会社がやるべきなのは、働き方の調整と受診の後押しです。
みんなの前で共有する
配慮のつもりでも、公開の場で触れるのは避けてください。
本人の信頼を失うだけでなく、職場全体の相談ハードルも上がります。守秘の線引きは早い段階で徹底した方が後が楽です。
休職や欠勤に進む前に確認したい実務
不調対応は感情論で終えず、制度と書類も並行して見ます。
就業規則の休職規定
休職制度の有無、対象者、期間、診断書の扱い、復職判定の流れを確認します。
規定が曖昧だと、休ませる段階で社内判断の基準がそろいません。本人への説明も長引きます。
年次有給休暇と欠勤処理
当面の休みを有休で処理するのか、欠勤にするのかを先に決めます。
給与控除や社会保険料への影響が出るため、場当たりで進めない方が安全です。
安全配慮の視点
会社には、無理な働かせ方を避ける姿勢が求められます。
明らかに不調のサインが出ているのに長時間労働を続けさせると、後から説明が苦しくなります。本人保護だけでなく、会社防衛の意味でも初動は軽く見ない方が得です。
よくある質問
社長から受けることが多い論点を先に整理します。
Q1. 5月病や6月病は放っておけば戻りますか
戻る人もいますが、見極めなしで放置するのは危険です。
数日で整う軽い疲労なのか、受診が必要な不調なのかは、会話と経過確認なしでは分かりません。
Q2. 診断書が出るまで会社は動かなくてよいですか
そうではありません。
診断書の前でも、面談、業務調整、受診案内、記録整理はできます。むしろそこが初動です。
Q3. 少人数の会社でも外部相談先を使えますか
使える場面があります。
産業医がいない会社でも、地域産業保健センターなどにつなげられることがあります。社内だけで抱え込まない方が判断しやすくなります。
Q4. 本人が大丈夫と言ったらそのままでよいですか
その場では無理をして答える人がいます。
大丈夫という返答だけで終えず、1週間以内に再確認の場を置き、業務量も合わせて見てください。
Q5. 周囲の従業員には何を伝えるべきですか
必要最小限で十分です。
業務分担の変更だけを伝え、本人の体調や私的事情まで広げない方が安全です。
Q6. 社長が最初にやることを一つに絞るなら何ですか
個別面談の日程を今日決めることです。
悩んでいる時間が長いほど、現場では悪化が進みます。完璧な答えを待つより、短い面談を先に入れる方が前に進みます。
まとめ
5月病や6月病という言葉に引っ張られず、事実確認、個別面談、業務調整、外部接続、記録の5点で動けば初動は外しにくくなります。社長が病名を決める必要はありません。先に働き方を整え、必要な支援につなぐことが役目です。
小規模企業では、一人の不調が売上、納期、他の従業員の負荷に直結します。だからこそ、まだ軽いうちに動く方が合理的です。今週のうちに、気になる従業員がいるか、面談記録の型があるか、休職規定がすぐ出せるかを確認してください。
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