【2026年最新版】法定三帳簿とは?対象となる帳簿一覧・書き方・保存期間を社労士が解説

労働者を雇用する事業主・人事労務担当者の皆さま、こんにちは。社会保険労務士の赤城正孝です。

法定三帳簿って何を用意すればいいの?保存期間はどのくらい?採用が増えてきた、あるいは労基署の調査が入るかもしれないと聞いて、慌てて調べ始めた経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。

法定三帳簿とは、労働基準法が全事業者に作成・保管を義務付けている3種類の帳簿のことです。どんなに従業員が少なくても、業種や規模を問わず対応が必要です。本記事では、社労士の視点から帳簿の種類・記載すべき内容・保存期間・よくある管理ミスまで、実務に直結する情報をまとめて解説します。

目次

法定三帳簿とは?

労働基準法により、労働者を雇用する事業者には、以下の3つの帳簿を整備し、保存することが義務付けられています。

労働基準監督署の調査時にチェックされますので、日頃からこれらの帳簿を正しく作成し運用するようにしてください。

法定三帳簿の一覧と保存期間(早見表)

まず、全体像を把握しておきましょう。

帳簿の名称記載項目保存期間・起算日
労働者名簿① 労働者氏名
②生年月日
③履歴
④性別
⑤住所
⑦従事する業務の種類
⑧雇入年月日
➈退職や死亡年月日、その理由や原因
3年

労働者の死亡・退職・解雇の日
賃金台帳① 労働者氏名
②性別
③賃金の計算期間
④労働日数
⑤労働時間数
⑥時間外労働時間数
⑦深夜労働時間
⑧休日労働時間数
⑨基本給や手当等の種類と額
⑩控除項目と額
3年(できれば5年)

労働者の最後の 賃金について記入した日
出勤簿① 出勤簿やタイムレコーダー等の記録
②使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類
③残業命令書及びその報告書
④労働者が記録した労働時間報告書等
3年(できれば5年)

労働者の最後の出勤日

賃金台帳と出勤簿の保存期間は、2020年の民法改正に伴う労働基準法改正により5年に延長されました。現在は経過措置として3年が適用されていますが、将来的には5年保存が義務化される見通しです。余裕を持って5年分を保管しておくことを推奨します。

法定三帳簿① 労働者名簿

作成義務の根拠

労働基準法第107条に基づく帳簿です。事業場ごとに作成する必要があります。本社と工場・店舗が別々にある場合は、それぞれの事業場で用意します。

記載が必要な項目

  • 氏名
  • 性別
  • 住所
  • 履歴(主な職歴や従事する業務の種類)
  • 採用年月日
  • 退職・解雇の場合はその年月日と理由
  • 死亡の場合はその年月日と死因

採用・住所変更・退職など、変更があるたびに更新する運用が求められます。

書き方のポイントと注意点

住所変更や結婚による氏名変更があった際に更新が漏れているケースが目立ちます。入社時に提出してもらった情報を書き込んだまま放置され、実態と合わない帳簿になっているというのが、調査が入ったときに発覚しやすい典型的なミスです。

特に従事する業務の種類は、人が配置転換になった際にも記録の更新が必要です。担当業務が変わったのに帳簿は古いまま、という状態にならないよう、定期的に確認をしておきましょう。

法定三帳簿② 賃金台帳

作成義務の根拠

労働基準法第108条が根拠です。給与を支払うすべての従業員について、毎月の作成が義務付けられています。

記載が必要な項目

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金の計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数(それぞれ区別して記載)
  • 基本給・各種手当の種類と金額
  • 所得税・社会保険料などの控除額と控除理由

書き方のポイントと注意点

残業代に関するトラブルが起きたとき、最初に確認されるのが賃金台帳です。労働時間数の記載が月合計だけで、時間外・深夜・休日ごとに分けて記録されていないと、適切な割増賃金を支払っていた証明ができません。

給与計算ソフトを導入していても、設定内容によっては労働時間の内訳が帳簿に自動出力されない仕様になっていることがあります。ソフトが自動生成した帳簿のフォーマットが法定要件を満たしているかどうかは、導入後に一度確認しておく必要があります。

法定三帳簿③ 出勤簿

作成義務の根拠

労働基準法第108条の解釈と、同法施行規則第54条が根拠になります。タイムカード・ICカード記録・システムログなど、形式は問いません。実態として始業・終業時刻が記録されているものであれば出勤簿として機能します。

記載が必要な項目

  • 始業時刻
  • 終業時刻
  • 休憩時間
  • 休日
  • 時間外・休日・深夜労働の時間数

書き方のポイントと注意点

手書きの出勤簿にありがちな問題として、本人の自己申告のみで実態が把握できていないケースがあります。特に残業代の不払いトラブルでは、実際の退社時刻と帳簿上の終業時刻が乖離しているとして問題になる事例が多く見られます。

タイムカードや勤怠管理システムを導入していても、打刻後に実際は残業していた、という状況が常態化しているならば、記録上は問題がなくても実態としての違法状態が続いている可能性があります。

法定三帳簿に加えて必要な有給休暇管理簿

2019年4月の労働基準法改正から、年10日以上の有給休暇が付与されるすべての従業員に対し、年5日の有給取得が義務化されました。それに伴い、有給休暇管理簿の作成・保存も義務となっています。

帳簿の名称記載項目保存期間・起算日
年次有給休暇管理簿①取得日
②付与日
③日数
3年間(できれば5年)

最後の年休取得日

記載が必要な内容は、有給休暇の基準日・日数・取得日の3点です。保存期間は3年間(賃金台帳・出勤簿と同様に、将来的には5年に延長の見通し)。法定三帳簿とあわせて、事実上四つの帳簿として管理することが現場の実務です。

その他の書類

ご説明した帳簿以外にも、保存が求められる書類があります。その代表的なものをご説明します。

名称説明保存期間・起算日
労働条件通知書労働者を雇用する前に、賃金や労働時間などの具体的な労働条件を明示し、交付する書類3 年

交付日
労使協定書労働者の過半数を代表する者との間で、法令の原則から外れた労働条件を定める際に締結される合意書3 年

労使協定の完結日
定期健康診断の結果労働安全衛生法に基づき、事業主が従業員に1年に1回以上実施する義務がある健診の結果です。5年

健康診断結果の作成日

手作業管理の限界と法改正リスク

紙・Excel・自己申告ベースで帳簿を管理している企業には、共通して見られるリスクがあります。

法改正への対応漏れ

割増賃金の計算基準、有給休暇の付与ルール、育児休業中の社会保険料の取扱いなど、労働関係法令は毎年のように改正されます。社内担当者が法改正を把握し、手作業の帳簿に反映し続けるのは、現実的に難しい状況になっています。

記載漏れと不整合

労働者名簿・賃金台帳・出勤簿は、それぞれが独立した書類でありながら、記載内容が相互に一致していることが求められます。氏名・労働時間・給与額など、3つの帳簿で数字が食い違っていると、調査が入った際に説明ができません。

トラブル発生時に証拠として機能しない

退職者から残業代を請求された、解雇無効を主張されたというトラブルが起きたとき、帳簿が法定要件を満たしていなければ、証拠として認められない可能性があります。

クラウド管理システムの活用

手作業での法定三帳簿管理は、現実的ではありません。自社のコア業務ではないので、対応が後に回されやすい業務です。そのため修正漏れが発生しやすく法改正リスクがあります。現実的な解決策はクラウド勤怠・給与システムの導入でしょう。システム化すれば始業・終業時刻の自動記録から帳簿の自動生成まで、大部分の作業を省力化できます。

弊所でのクラウド勤怠システムの導入サービスについては、以下のページをご覧ください。

よくある質問

Q. 従業員が1人でも法定三帳簿は必要ですか?

必要です。労働基準法に規模による免除規定はなく、1人でも雇用している事業者はすべて対象になります。パートタイム・アルバイト・短時間労働者も同様です。

Q. 紙の帳簿とデジタルデータのどちらが有効ですか?

どちらも有効です。労働基準法は帳簿の形式を紙に限定していません。デジタルデータの場合は、必要なときに印刷・出力できる状態であることが条件です。クラウド上に保存しているだけで、いつでも参照・出力できる体制を整えておけば問題ありません。

Q. 保存期間を過ぎたら捨てていいですか?

法定上の義務はなくなりますが、すぐに破棄するのは得策ではありません。退職した従業員からの未払い残業代請求は、退職から数年後に行われることもあります。訴訟上の証拠として機能させるには、法定保存期間よりも長く保管しておく方が安全です。

Q. 給与計算ソフトで自動作成された帳簿は、法定要件を満たしていますか?

ソフトによって異なります。賃金台帳の時間外・休日・深夜の時間数内訳が自動出力されない設定になっているケースや、労働者名簿の必須項目が揃っていないテンプレートを使っているケースもあります。導入前に一度、社労士または専門家に確認してもらうことを推奨します。

Q. 労基署の調査でまず何を見られますか?

就業規則とあわせて、賃金台帳・出勤簿の確認が最初に行われます。時間外労働の時間数と賃金台帳に記載された割増賃金が一致しているかどうかが、最初の照合ポイントです。特に出勤簿で法定外残業の有無はまっさきに調査されます。

まとめ

法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)は、全事業者に義務付けられた基本中の基本です。作成だけでなく、法定要件を満たした内容での保管が求められます。

確認すべきことチェック内容
3つの帳簿が揃っているか労働者名簿・賃金台帳・出勤簿
有給休暇管理簿があるか年10日以上付与の従業員が対象
保存期間を守っているか賃金台帳・出勤簿は当面3年(将来5年)
記載内容が法定要件を満たしているか特に時間外・休日・深夜の内訳
3帳簿の数字が一致しているか氏名・労働時間・給与額の整合性

法改正のたびに手作業で対応し続けることが現実的でなくなっているのは、多くの中小企業の現状です。クラウドシステムへの移行は、帳簿管理のリスクを下げるだけでなく、担当者の業務負荷を大きく減らす手段でもあります。

まず何から着手すればよいかわからない場合は、クラウド勤怠システムに強い社労士にご相談することをオススメいたします。弊所では初回相談無料です。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

少しでもご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。

この記事を書いた人

人事労務のデジタル支援パートナー。経営者の「時間が足りない」という課題を解決する専門家で、経営者が将来を見据えた舵取りに専念できる時間を創出する仕組みづくりを得意としています。企業内部に深く入り込み、共に汗を流しながら課題解決に取り組むスタイルが特徴です。社会保険労務士・中小企業診断士・ITコーディネータ・医業経営コンサルタント

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